日日平安
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読んでいない本について堂々と語る方法 -好日読書 vol.43-
 読書一郎です。

 毎日新聞で、若島正さんが『読んでいない本について堂々と語る方法』という本を紹介されていました。

 読んでないのに読んだふりをしてしまう、利口ぶってしまう、というのは「本好き」なら誰でも思いあたるのではないでしょうか。読んでいない本がうず高く積まれた部屋に暮らす私も、むろんその一人です。
 早速読んでみました。著者ピエール・バイヤールはフランスの文学研究者です。冒頭からすごくて、

 私自身、本を読むことがそれほど好きなわけではないし、読書に没頭する時間もない。そんな私がよく、読んだことがない本について意見を述べないといけないという苦しい立場に身をおく羽目になる。(中略)その大半は開いたことすらない本なのだ。

 こういうのは逆にいやみな場合もあるのですが、通読した限りその辺も大丈夫でした。

 著者の主張をひとことでいえば「読んだからといって偉そうにするな」というものです。
 読んだといってもドンドン忘れてしまう。「全部読んだ」という体験だけは記憶に残るが、それだけのことである。
 個々の本を読んだ読まないで一喜一憂するのではなく、自分自身の「内なる書物」を育てるほうが大事だ。読書は創造性を阻害する・・
 「正当な主張」と言っていいのでしょうが、大上段にではなく、ふざけた感じで書かれているのがいいところです。
 ヴァレリーの「ベルクソンについて」という講演を引用しながら「ヴァレリーはベルクソンを読んでいなかったのでは」と疑惑を向けるところなどは思わず笑ってしまいました。

 後半、夏目漱石の『吾輩は猫である』が出てきたので驚きました。フランスでも有名なのでしょうか。もしかしてこの著者は(ベンダサンやポール・ボネのように)日本人の覆面ペンネームでは?と思ったのですが、調べたら本人が来日して講演会などをしており、その模様もウェブ上で公開されているので、やはり実在の人物のようです。

 本書を読んで思い出したのがショーペンハウエルの『読書について』です。結構似たようなことが書いてあったと思うのですが、『読書について』は20年くらい前に読んだきりで、本も手元にありません。読んだと言えば読んだのですが、もはやおぼろげな記憶があるばかりです。

 また、昔読んだ『アクロイドを殺したのはだれか』という本は、この人の著書であることがわかりました。クリスティーの『アクロイド殺し』には別の犯人がいる、と主張する驚くべき内容で、なかなか説得力のある推理でした。
 それ以外にもいろいろ書いてあったらしいのですがまったく覚えておらず、この本も手元にありません。やはりおぼろげな記憶があるばかり、読書という体験のあいまいさが今さらながらよくわかりました。(読書一郎)
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