絵日記 日日平安 東北独立譚 Vol.2『アウターライズ』(赤松利市)を読む
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東北独立譚 Vol.2『アウターライズ』(赤松利市)を読む

 東日本大震災に匹敵する災禍「アウターライズ」に見舞われた東北だったが、規模に比して抑えられた被害状況を公表した。どんな対策を講じたのかと注目が集まる中で突如、東北県知事会が“独立宣言”を行った。それから三年、一切の情報が遮断された国へと変容した東北に、ジャーナリストたちが招かれる……。(アマゾンの説明文より)


 という物語である。これがまた、非常におもしろい。コロナ禍で在宅を余儀なくされている人すべてに「国体」を考える本としてぜひ読んでほしい。

 日本は狭い国だが、狭い国だからこそか、昔から「大国」然としている。古来からの北海道や沖縄、東北という「辺境」に対する「差別」や「圧政」はいま始まったことではない。

 「東北独立」の思想的背景としてこの本に書かれている「東北人と日本人」というコラム(もちろん架空)には、東北地方が日本のエンジンと呼ばれた「集団就職」や「金の卵」の話、福島第一原発で発電する電力はすべて東京のためのものなのに、事故が起こると東京が津波の瓦礫を受け入れ拒否をしたこと、また、東北を支援する「KIZUNA」という言葉は、もとは「木の綱」すなわち家畜や犬を通りがかりの立ち木に繋いでおく綱のこと……といった、東北に対する歴史的な見方、「差別」や「圧政」のことが述べられる。

 そして、この小説の原型である、井上ひさしの『吉里吉里人』「大国日本のかかえる問題を鮮やかに撃つおかしくも感動的な新国家」(アマゾンの説明文)を描いたように、この小説も、「3.11後」の「まったくなかったことのようにふるまう日本国」に対するアンチテーゼとして、「来る「アウターライズ」のためにいかなる災害対策を行ったか」「それが実現できる国家とはいったいどのような国体なのか」を非常にわかりやすく描く。

 で、そんな「東北国」をジャーナリストが招かれて取材をして……というのがこの小説のほとんどなのだが、非常に残念ながらこの小説は、このあとに起こるはずの東北の「壮大な物語」の入り口でしかない。

 「すでの起こった大きいこと」を登場人物のジャーナリストと同様、周りをなぞって終わってしまっている。物語のはじめに出てくる、会津白虎隊の飯沼貞吉や江南哲夫の子孫の話なんかは、いくらでも膨らませられるような気もする。
 「続編」(があるなら)を期待したい。


 ともかく、除染作業員をやりながらスマホで小説を書き続け、東京に戻ってからはマンガ喫茶で書き続けて62歳でデビューした赤松利市氏の存在そのものが僕らの希望である。「絶望」から「希望」へとつなぐ物語を、いまだからこそ紡いでいってほしい。(管理人)

2020042
小説の舞台「河北市」のモデルであろう石巻市の「墨廼江」を飲みながら小説を読む
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[ 2020/04/26 17:07 ] | TB(0) | CM(0)
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