絵日記 日日平安 『上野アンダーグラウンド』本橋信宏
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『上野アンダーグラウンド』本橋信宏

 先日読んだばかりの『全裸監督 村西とおる伝』の著者の作品。まさに「横丁、路地裏、色街跡」のルポから、戊辰戦争、西郷隆盛像などの歴史、男色サウナ、アメ横、パチンコ、コリアンタウン、不忍池の老売春婦まで、上野という街の特異性をあますところなく描いた傑作ルポといえる。

 だいたい毎週のように上野に通っていても、ほとんど「点」と「点」、知っている店のことしかしらない。長年行ってるのでいろんな闇もみたし、僕よりよっぽど深くそんな闇を知っている人からもいろんな話を聞くが、結局それも「点」と「点」でしかなく、ここまで多岐にわたった「上野」の中身を読むと、あまりの街と人の混沌、奥の深さ、闇の深さに愕然とし、ああ、だからこそ上野は人間臭いのだし、汚くて危ない街なのだけど結局足を向けてしまうんだな、ということがわかる。

 著者はその答えを「上野駅」に求めているのだと思う。北からやってきた人の終着点であり、東京という新しい世界の入り口であり、その複雑で怪しい駅や行き交う人たちの群れそのものが上野をつくっている。

 それは「エピローグ」にある著者自身の話、というか著者の妻の父(義父)の話が象徴的で、北津軽郡のリンゴ園を営む義父が、稼ぎがなくなると出稼ぎに出てきて働き、「体がきしむほどの労働を死ぬまで続け」亡くなっていく。

 その義父の生前の「上野で食った中華そば、うめくってあったなぁ」という言葉をもとに、著者はルポの旅の合間にそのラーメン屋をいつも探しているがみつからない、というのが印象的で、つまりは、この義父(東北人)の「津軽と上野を往復して労働を続ける身体性」が上野そのものなんだな、というのが納得できる。

 必読、名著である。(管理人)

20190904
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[ 2019/09/04 09:37 ] | TB(0) | CM(0)
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