日日平安
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『TOKYO YEAR ZERO』と『海に帰る日』 -好日読書vol.19-
 デイヴィット・ピース『TOKYO YEAR ZERO』(文藝春秋)を読みました。立派なサイトが開設されていてhttp://www.bunshun.co.jp/tyz/index.html出版社も相当力を入れていることがうかがえます。
 昭和20年〜21年の東京を舞台にしたミステリで、著者はイギリス人(日本在住)です。鼻白むようなことはほとんどなく、リアルかつダークです。
 題材は小平義雄事件(戦後すぐの事件だったんですね)。小平自身が実名で登場、被害者も実名です。
 小平は物語中半であっさり捕まってしまい、この先どうなるんだと思うのですが、飽きるようなことはなく、最後にはドンデン返しがあります。(伏線もちゃんと張られています)
 たいへん読みづらい独特の文体ですが、主人公の混濁した内面、さらには占領下の東京の阿鼻叫喚ぶりと妙にマッチして、それなりに楽しめます。
 また、作中、日本の小説が「引用」「サンプリング」のような形で登場します。太宰の『トカトントン』が全巻を通して出てきますし 永井荷風の『ぼく東綺譚』もかなり長く出てきます。石川淳の『焼け跡のイエス』泉鏡花の『眉かくしの霊』もありました。「参考文献」としてたくさんの小説が挙げられているのですが、これらは皆どこかに顔を出しているようですね。

 本書は三部作の一作目、ということで、二作目は帝銀事件、三作目が下山事件だそうです。帝銀、下山は未解決事件。どう小説化されるのか、楽しみに待ちたいと思います。

 少し前にジョン・バンヴィル『海に帰る日』(新潮社)を読みました。イギリスでは「ブッカー賞」を受賞、豊崎由美さんがTBSラジオ「ストリーム」で絶讃、殊能将之さんもご自分のHPで絶讃されていた小説です。
 老境の主人公が、少年時代を過ごした海辺の避暑地を訪れ当時を思い出す、という話。匂いたつような濃密な文章がすばらしく、何というか、並の小説とは「格が違う」印象さえ持ちます。(翻訳もいいのだと思います)
 この小説も最後にドンデン返しがあります。私は、この仕掛はいらないんじゃないか、普通に書けばいいのに、と思いました。まあ作者はミステリ好きの人なのかもしれません。(読書一郎)
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