絵日記 日日平安 本屋大賞を予想する -好日読書 vol148-
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本屋大賞を予想する -好日読書 vol148-

 先日「本を読む習慣のない学生にすすめる本」という原稿を書いたときに(http://ci5.blog20.fc2.com/blog-entry-2021.html『そして、バトンは渡された』という本のことをチラッと書きました。
 「今年の本屋大賞はたぶんこれで決まりです」などと書いてしまったのですが、実は、その時点では他のノミネート作はほぼ読んでいませんでした。

 読まずにこんなことを言うのもなんなので、一念発起して、他の候補作も読みました。
 小説をこれだけまとめて読んだのは20年ぶりくらい?でしょうか。

 以下、本屋大賞ノミネート作の感想と、大賞の予想を競馬風に書いてみます。
 順番は読んだ順です。


『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
 ブランチブックアワード受賞。キノベス(紀伊國屋書店の書店員さんがセレクト)1位。他の候補作を読みましたが、やはりこれが本命◎です。
 重く書けそうな題材を明るく描ききり、それでいて小説的なおもしろさはしっかりキープしてくれています。
 ちなみに私はこの小説を読んでいて通勤電車を1駅乗りすごしました。
 同じ著者の『強運の持ち主』『幸福な食卓』も読みましたが、本作がベストです。


『ベルリンは晴れているか』深緑野分
 第二次大戦直後のドイツを舞台にしたミステリ。
 日本人は一人も出てきません。荒廃したドイツの様子もリアルです。
 こういう小説を書く作家が現れたか、という感慨があります。
 ただ、そういうことを抜きに読むと、ストーリーや人物造形に不満が残るのも事実。次作以降にまだまだ期待の作家です。


『愛なき世界』三浦しをん
 東大の植物研究室の「ちょっとだけかわった日常」を描いた小説。
 ささやかな事件や成就しない片思いが丁寧に描かれていきます。登場人物もみな魅力的。三浦さんの小説家としての力量がよくわかる作品です。
 惜しむらくは、2012年の大賞受賞作『舟を編む』と似た印象なこと。「今回は初ノミネートの瀬尾さんに投票しよう」となりそうな気がします。なので、予想は連下△。


『熱帯』森見登美彦
 作者自身が「我ながら呆れるような怪作」と語っている通り、あきれるほどの怪作(笑)です。
 次々に繰り出される「幻想的なエピソード」とリアルに描かれた「東京・京都の地誌」のバランスが絶妙で、読み終わってしばらくは、現実世界にいても本の中に捕らえられてしまったような、熱に浮かされたような気分で過ごしました。
 こういうスクリューボール的な作品が大賞となる確率は低いと思うのですが、スタンダードな「いい話」は票が割れる可能性もあり、森見さんに取らせたいという書店員さんも多そうで、単穴▲。


『さざなみのよる』木皿泉
 ヒューマンドラマ。若くしてなくなった女性の人生が、短いエピソードを重ねることで、じわりと浮かび上がってきます。
 とにかくうまい。ただ、他の候補作と比べるとちょっと軽いかなあという印象です。これなら『そして、バトン』に投ずるのではないか。とは言っても読みやすさとうまさを買って対抗〇。

 2014年に2位だった『昨夜のカレー、明日のパン』も読みました。こちらも超傑作です。とぼけているのにせつない。これで大賞が取れなかったんですね・・この年の大賞は『村上海賊の娘』。相手がよくなかった。めぐりあわせも大きいですね。


『ある男』平野啓一郎
 結婚して子供まで授かった相手が別人だった・・候補作中、いちばんひきこまれる冒頭でした。「この先どうなるんだ!?」と期待しながら読みました。
 ただ、ストーリーは意外に(たぶんわざと)展開しません。三島由紀夫を思わせる思弁的な文体で、読者にじっくり考えさせる作品となっています。個人的には不満もありますが、読みごたえはありました。
 ただ、本屋大賞向きではない気がします。初ノミネートであることとキノベスでも2位になったことを加味して大穴☆。

 話題になった『マチネの終わりに』も読みました。しゃらくさい小説ですが、ラストがとにかく美しいですねえ。中年男女の恋愛は、渡辺淳一をもちだすまでもなく不潔な雰囲気をまとうものですが、不潔でも通俗でもなく仕上がっているのがさすがです。文章の力ですね。映画化されるようですが、文章がなくなるとかなり通俗的になりそうで心配です。そういえば「スマホを落としただけなのに」という映画がありましたけど、この小説もまさにそういう話ですね・・


『ひと』小野寺史宜
 人情小説。他の候補作と比べて「小説技術」の点で見劣りするのは事実ですが(他の候補作がみんなすごいので・・)いい話なのはまちがいなく、読み終わってとても温かな気持ちになりました。
 こういう作品が選ばれることに、日々の書店員さんたちのまじめな仕事ぶり、暮らしぶりが見えてくるかのような気がします。


『火のないところに煙は』芦沢央
 怪談。『さざなみの夜』『ひと』の後で読むと「清涼剤の並んだ中にある一服の毒薬」という感じで ものすごく新鮮に読めました。
 私はホラー小説が苦手で、読んでいて鼻白んでしまうことが多いのですが、これは恐かったです。読後感がきわめて悪いのもすばらしく、本屋大賞の懐の深さを感じます。
 大賞はないと思いますが、こういう小説を評価する「裏大賞」を作るといいんじゃないか、と思いました。
 同じ著者の『悪いものが、来ませんように』も読みました。おもしろかったでずか、本作の方がいいと思います。


『フーガはユーガ』伊坂幸太郎
 常連・伊坂幸太郎さんの新作。
 伊坂さん、久々に読んだのですが、やはり「モノが違う」作家さんだなあ、と思います。
 陰惨な話なのに、文体とリズムで軽快に読ませてしまう。軽く書いているようで、構成がカチッとしている。登場人物もみな「ちょいワル」感があり魅力的です。
 未読だった2008年の大賞受賞作『ゴールデンスランバー』もついに読みました。傑作ですが、今読むと少し「古い」かも。今ならSNSに動画がアップできます。現代日本で「権力が情報を統制する」のは難しいんだと思います。(=「世の中がよい方向に向かっている」ということです。中国ではまだ・・ですからね)


『ひとつむぎの手』知念実希人
 医療小説。作者は現役のお医者様で、医局の狭い狭い人間関係や医師の過酷な日常がリアルに描かれています。
 正月に『死すべき定め』という本を読みました。すばらしい本でしたが、本作にも『死すべき定め』を彷彿させるエピソードが登場します。あらためて医師という職業に対する敬意が増しました。
 個々のエピソードがからみあわず連作短編のようである、登場人物の魅力が今一つである、カタルシスを100%与えない大人なラスト、と、小説の完成度はやや劣るかもしれません。ただ、それらを補って余りある魅力を備えた作品です。


 いやあ、小説って本当にいいものですね。(水野晴郎 今何してるんだろう、と思ったらだいぶ前に亡くなられて・・遅ればせながらご冥福をお祈りします)
 今年はもっともっと小説を読もうと思います。それではまたお会いしましょう。(読書一郎)
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[ 2019/02/20 16:20 ] 好日読書 | TB(0) | CM(7)
いやぁ
みんな読んだんですね! 大変だなぁ(笑)。

木皿泉はドラマでしか知らなかったので読みたくなりました。

また書いてくださいね。
[ 2019/02/20 16:23 ] [ 編集 ]
たいへんでしたよ!(笑)
でも楽しいひとときでした。
馬券を買った気持ちで、発表を待ちます。
[ 2019/02/21 20:02 ] [ 編集 ]
◎と〇の2冊を読みました。甲乙つけがたいですねぇ。

でも流れは木皿さんかもな、と思いました。競馬はそういうものです(笑)。
[ 2019/02/22 11:52 ] [ 編集 ]
流れ来てますか?(笑)
この2作が票を食いあい、森見、平野が来る可能性もある。これも競馬っぽいですよね?わからないけど。
[ 2019/02/23 22:08 ] [ 編集 ]
前回2位だったから1位にしたい、というのが人間の意識です。が、すでに書店員のコメントがオビにたくさん入ってるから、もういいかな(笑)。というのも人間の意識ですよねぇ。

[ 2019/02/24 10:48 ] [ 編集 ]
本日発表になりました
4/9 結果が発表になりました。

大賞 『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(著)文藝春秋 435点
2位 『ひと』小野寺史宜(著)祥伝社 297.5点
3位 『ベルリンは晴れているか』深緑野分(著)筑摩書房 282.5点
4位 『熱帯』森見登美彦(著)文藝春秋 250.5点
5位 『ある男』平野啓一郎(著) 文藝春秋 242.5点
6位 『さざなみのよる』木皿泉(著)河出書房新社 239.5点
7位 『愛なき世界』三浦しをん(著)中央公論新社 208.5点
8位 『ひとつむぎの手』知念実希人(著)新潮社 167.5点
9位 『火のないところに煙は』芦沢央(著)新潮社 151.5点
10位 『フーガはユーガ』伊坂幸太郎(著)実業之日本社 136.5点

見事的中(笑)。票数を見ても圧勝でしたね。管理人さん、何かおごってください(笑)。

でも管理人さん推しの『ひと』が2位!これは予想できなかった。
木皿さんは伸びず、木皿さんの票を『ひと』が持って行った気もします。
『ベルリン』の3位もビックリしました。
三浦さんや伊坂さんが伸びていないことを見ても、初ノミネートの人は有利なのかもしれません。
[ 2019/04/09 22:25 ] [ 編集 ]
Re: 本日発表になりました
的中ですね!さすが!
おめでとうございます!
浅草でごちそうします(笑)。

『ひと』の2位も意外でしたね。こちらも対抗的中(?)

本の順位付けはおもしろいものですね。三浦さんもまだ読んでませんが……。




> 4/9 結果が発表になりました。
>
> 大賞 『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(著)文藝春秋 435点
> 2位 『ひと』小野寺史宜(著)祥伝社 297.5点
> 3位 『ベルリンは晴れているか』深緑野分(著)筑摩書房 282.5点
> 4位 『熱帯』森見登美彦(著)文藝春秋 250.5点
> 5位 『ある男』平野啓一郎(著) 文藝春秋 242.5点
> 6位 『さざなみのよる』木皿泉(著)河出書房新社 239.5点
> 7位 『愛なき世界』三浦しをん(著)中央公論新社 208.5点
> 8位 『ひとつむぎの手』知念実希人(著)新潮社 167.5点
> 9位 『火のないところに煙は』芦沢央(著)新潮社 151.5点
> 10位 『フーガはユーガ』伊坂幸太郎(著)実業之日本社 136.5点
>
> 見事的中(笑)。票数を見ても圧勝でしたね。管理人さん、何かおごってください(笑)。
>
> でも管理人さん推しの『ひと』が2位!これは予想できなかった。
> 木皿さんは伸びず、木皿さんの票を『ひと』が持って行った気もします。
> 『ベルリン』の3位もビックリしました。
> 三浦さんや伊坂さんが伸びていないことを見ても、初ノミネートの人は有利なのかもしれません。
[ 2019/04/09 23:38 ] [ 編集 ]
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