絵日記 日日平安 『しろいろの街の、その骨の体温の』村田沙耶香
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『しろいろの街の、その骨の体温の』村田沙耶香

 高校時代、「主流」の人たちの集まりの前で、ある女の子に「その本みせて」と声をかけられた。

 その女の子は「主流」の人たちからなぜか「気持ちが悪い」「近づくな」といわれていた女の子で、僕は持っていた本をすぐに渡した、つもりだった。だが僕の中では、ほんの一瞬、ちょっとしたためらいみたいなものがあったことをいまでもリアルに覚えている。

 その瞬間、自分自身が主流でもなんでもない「どこにも属せない人間」なのに、「一瞬のためらい」を感じたことにめちゃくちゃ動揺した。そんなはずはない。おれは「主流」じゃない。差別する側でもないし、差別するつもりもない。なのにどうして一瞬ためらったのか。

 それ以来、自分の中で、その瞬間の自分も含めて「権力側」「主流側」「そういう意識を持つ側」すべてを敵にすることに決めたような気がするし、いろいろ妥協はしたけれど、30年経ったいまも自分は「主流」の人間が嫌いだ。

 そんな感覚、そんな意識が全体に描かれているのがこれ。

『しろいろの街の、その骨の体温の』村田沙耶香
『マウス』村田沙耶香

 両方とも、小学校高学年の女の子が主人公で、両方とも後半は時間が数年経過する(『しろいろの~』は中学生、『マウス』は大学生)。前半の展開「あっち側の主流の人」「こっち側の相手にされない人」という構図は、両冊ともほとんど同じだ。

 『マウス』の主人公は、そのまま『コンビニ人間』の主人公みたいになる。つまりは「決まりきった社会(会社)の仕事をこなすことによって「普通」を勝ち取る」という普通の人間になる。が、中身はまったく小学生時代と変わらない。

 『しろいろの~』の主人公は完全に停滞する。小学生の頃と同じ少年が好きで、ぜんぜん離れられず、少年が成長するほど、自分の変わらなさ具合にもどかしくてしょうがなくなり……という停滞の状態。

 そして両冊の後半がどうなるか、というのは読んでみてほしいとしかいいようがないが、ともかくどちらの本も僕は、高校時代の「気持ちが悪い」「近づくな」といわれていた女の子の姿と、僕の持っていた本を渡したときのほんのちょっとした自分の歪んだ差別意識を思い出すのである。(管理人)
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[ 2018/06/22 13:32 ] | TB(0) | CM(0)
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