絵日記 日日平安 2018年11月
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『AV女優』永沢光雄

 先般紹介した末井昭氏の『自殺』の1章に、ライターの永沢光雄氏の死について書かれている。この章を読んで手に入れたのがこの本。

 1996年発行。AV女優42人にインタビューして、彼女らの半生を綴る。「養父に犯された少女」、「虐待を受け続けた少女」、「音大生のお嬢様」、「母親の男狂いに悩まされた少女」等々、文庫本にして650ページにわたる記録はまさに奇跡だと思う。AV女優にならないまでも、同じような家庭の事情や幼少期のトラウマを抱えた女性は世の中の半分くらいいるのであり、彼女たちはその途上で闘っている。そんな事実を改めて突き付けられる。

 そんな女性たちの人生の凄まじさと、その合間にたぶん彼女たちが求めているのであろうほんのちょっとした「幸せ」みたいなものが垣間見られるのがこの本の読みどころだ。

 たとえば、カナダへ逃げた少女(もちろん後のAV女優だが)が、生活ができずに教会の世話になり、そこで生活保護を受けている仲間ができる。その後、レストランに職をみつけ働き出すと、余りものを持ち帰れるようになり、それを「みんな、今日はご馳走だよ!」と教会の仲間へ持っていく、というエピソードがある。

 永沢氏はこの「『みんな、今日はご馳走だよ!』という台詞を文字に記すことができることが幸せだ」と書く。ボロボロの少女期からAV女優へ、そのちょっとした合間に、こんな「勝敗という概念のない世界」で、みんなと「ご馳走」を分け合う。だからこそ出てきた彼女の言葉を文字にする幸せ、というのはライター冥利に尽きるのだと思う。

 この本の「文庫用あとがき」には、文庫化にあたって出会った編集者のエピソードが収められている。もちろんそれは男性でありAV女優でもない。ただこの作品が好きというだけで著者に会いに来て、本を書くことを勧める。直球のライターにしてこれだけ直球の編集者。二人とも早世してしまったのだが、なんだか「本をつくる」ことの歓びと背中合わせにある狂気みたいなものを、この二人には感じてしまった。そんな本でもある。(管理人)

20181128
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[ 2018/11/28 13:45 ] | TB(0) | CM(0)
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