絵日記 日日平安 2018年01月
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2017年ベスト10(その3 文芸書とビジネス書 展覧会など) -好日読書 vol142-

 読書一郎です。これで最終回です。

<文芸書>
『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』紀田順一郎 松籟社(初版2017年7月)
 古書の蒐集で知られる評論家・紀田潤一郎。80歳を迎え、手狭なマンションに引越すことを余儀なくされ、3万冊の蔵書を手放した・・その体験を振り返った本です。
 3万冊というと、ダンボール500箱以上になるでしょうか。運び出すのに、トラック2台、アルバイト8人に来てもらい、2日がかりの作業だったそうです。
 「紀田順一郎が本を手放す」というのは「淀川長治が映画を見られなくなる」「明石家さんまがしゃべれなくなる」というような事態で、もう涙なくしては読めない本です。
 人生ってなんだろうというか、誰でもいつかはこうなるというか、いろいろなことをしみじみと考えさせられました。


『文学問題(F+f)+』山本貴光 幻戯書房(2017年12月)
 夏目漱石の『文学論』という本をご存知でしょうか?
 小説ではなく、文学の研究書です。漱石はもと東大の先生。『文学論』は東大での講義録。岩波文庫から上下巻で出ていますが、文語体+難解かつ無味乾燥な内容で、たぶん誰も読んでいない。(もちろん私も読んでいないです)
 本書は、著者の山本さんがその『文学論』を読み、現代語訳し、丁寧に解説し、理論を補強し、今の時代によみがえらせようとした本です。

 こうして、よみがえった『文学論』を読んで思うことは「漱石すげえ」ということです。
 問題意識の広さ、深さが同時代の日本はもちろん、世界的にも突出している。異常ともいうべき論理癖というか分析癖というか、圧倒的(すぎる)理知性もすごいです。 
 田山花袋の『蒲団』とかが読まれていた時代にこんな内容が理解されるはずもなく、漱石の孤独感がしのばれます。「突出した天才だった」ということなのでしょう。
 さて、現代、山本さんのこの仕事に答えてくれる後継者は現れるでしょうか?現れないような気もするのですが、そこは期待して待つことにしましょう。


『勉強できる子卑屈化社会』前川ヤスタカ 宝島社(初版2016年12月)
 テレビドラマとかでは「勉強できる子」はたいてい「人間性に欠けたイヤな奴」というような役になっています。
 「勉強なんてできても社会では役に立たないぞ」なんていう言い方もよく聞きます。
 本書は「勉強できる子」だった著者が、世の中のそういうバイアスを、これまでのうらみをこめて描きだした評論です。
 小説ではないのですが、とても「文学」を感じる本でした・・


『うしろめたさの人類学』松村圭一郎 ミシマ社(初版2017年10月)
 人類学者の書いたエッセイ。
 著者はエチオピアで研究活動をされています。「エチオピア社会」というフィルターを通して、これからの私たちの社会のあり方が構想されています。
 まじめで文学的。とてもいい本だと思います。


『ビニール傘』岸政彦 新潮社(初版2017年1月)
 今回唯一の小説です・・
 昨年『断片的なものの社会学』という本を取り上げましたが、その著者が小説を書いて、芥川賞候補になりました。
 『断片的~』そのままの、市井に生きる人たちの人生をすくいあげてくれる本です。



<ビジネス書>
『笑われる勇気』蛭子能収 光文社(初版2017年10月)
 「蛭子さんが書いたビジネス書」という衝撃のコンセプト。スーツにネクタイを締めた蛭子さんの写真が載っています。
  蛭子さんは「女性自身」で人生相談を連載されていて、それをまとめた内容です。
 「質問 人生がうまくいきません」「回答 人生がうまくいくと思っているのがまちがい」など、全編身もフタもない回答が続き、笑いながら読んでいると、その一切ブレない姿勢に段々影響を受けてくる・・
 実は優秀なビジネス書なのかもしれない、という気がしてきました。


『ジョブ理論』クレイトン・M・クリステンセン 依田光江 訳 ハーバーコリンズ・ジャパン(初版2017年8月)
 『イノベーションのジレンマ』のクリステンセン教授の最新作です。
 もちろんおもしろいのですが、「お客様目線で考えろ」的な内容なので、日本人からすると割に当たり前な印象も持ちます。
  蛭子さんの本の方が衝撃度は上だと思います。(笑)

『「富士そば」はなぜアルバイトにボーナスを出すのか』丹道夫 集英社新書(初版2017年11月)
 立ち食いそばチェーン「富士そば」の会長が書いた本。
 アルバイトにもボーナスが出る、残業はなし、正月はキッチリ休む、新メニューは各店舗で開発する、従業員マニュアルはない・・等々、管理ではなく社員の能力を引き出そうとするその経営手法は本当にすばらしいと思いました。
富士そばの本もずいぶん前に取り上げたことがあります。
 http://ci5.blog20.fc2.com/blog-entry-113.html
 この本も再読しましたが、久々に読むと、東海林さだおの文章力はすごいです。


<展覧会とテレビ>
「タイ展」(東京国立博物館)
「運慶展」(東京国立博物館)
「緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレビ東京)

 今年は映画もほぼ見ておらず、ライブとかコンサートにも行きませんでした。
 展覧会には行きました。「タイ展」は、ふだんあまり見ることがないタイの仏像を集めた展覧会。日本のものとは造作が違っていて、興味深かったです。
 「運慶展」は話題にもなりました。平日に会社を休んで行ったのですが、それでも混んでいました。像の迫力は圧倒的で、行ってよかったです。
 「路線バスの旅」が新シリーズになった今、いちばん楽しみにしているテレビ番組が「池の水ぜんぶ抜く」。ここ数回で「環境省推薦」みたいになってきているのがちょっと心配です・・

 それでは、本年もよろしくお願いします。(読書一郎)

20180131
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[ 2018/01/31 10:17 ] 好日読書 | TB(0) | CM(2)
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