絵日記 日日平安 2013年10月20日
FC2ブログ
2013 09123456789101112131415161718192021222324252627282930312013 11
月別アーカイブ  [ 2013年10月 ] 

冬が来るまえに -ゲンゴロウの銀塩日記 vol.145-

 青いギターの弦が久しぶりに新品に変わり、勉強している子供の迷惑を顧みず、弾いてみると、実に惚れ惚れとした音色がする。いや上手いとか下手とかではなく、指がコードを思い出してゆく過程が実に楽しくて、衰えた声で懸命にシャウトしている自分が妙に嬉しい。弦を張ってくれた全力少年はスピッツのコピーバンドのドラムだから、今回は敬意を表して、「空も飛べるはず」を選んでみると、シンプルなコードで、雰囲気がでるのがカッコいい。オフコースなんて、無茶苦茶なコードで、「song is love」の頃なんて、どんなに練習しても雰囲気すらでない。「冬が来るまえに」のメロディラインと歌詞は繊細で、素晴らしいのだけれど、手のひらに落とすと溶けてしまう雪の結晶のようで、躍起になって弾こうとしたのだが、小田さんの雰囲気どころかただの騒音になってしまう。

ことばにしてしまえば あなたを傷つけるから
疲れたそのよこがお ただなつかしくみつめてる
ああ燃ゆる思いは消えて かわらぬ愛はもうみえない
あなたの嘘のないやさしさに かえすことばもなく
私はただむなしく ありがとう ありがとう

透明なまどろみ過ぎても
少女は愛の終わり 気づかずに夢みてた


 という具合で、今にしてみると繊細すぎてさっぱり歌詞の意味もわからない。少女マンガにでてくる少女が交換日記につづった愛のポエムみたいだけれど、小田さんが唄うと自分の気持ちそのままのような錯覚がしたものだ。だから、当時はこの歌詞を丸暗記して、カポを5フレッドに入れ、出ないテノールを無理に出し、下宿のみんなの顰蹙をかったものだ。
 県外の大学へ行く、ということは一度地元の人間関係を全てリセットして、無理やり友達を作らなければ、という強迫観念に襲われるようなもので、少なくとも家族は温存したまま進む高校や、携帯でいつでも地元時代の友達と連絡をとる、といった甘えがない分、かなりハードなものだったかもしれない。思い返せば、講義なんて放り出し、地元に依存するということだって、時間的に余裕があったあのころ、できたはずだけど、帰ったって土方の手伝いが待っていたから、僕は毎日ギターを弾いていた。きっと1日4時間くらいかな。だから、このギターは当時の僕と一番一緒にいた存在だったかも。
 それから時代はバブルまっしぐらに進み、ある日、永久に日本が発展し続けると信じる頃にチェルノブィリの事故がおこったんだ。それでも僕等は普通の日々を送り、やがて昭和が終わってゆく。あれは何だったんだろう。昨日のような、遠い昔のような、本当に幻想のような、夢のような日々だった。
 そして、今、僕の子供の大学や進路について、何にも意見も希望もない。ただ、これからこの子達はどうするのかな、と思う。僕がそうだったように、いつの時代も安易に、ものすごく安易に時は流れて、同じ事を繰り返していくのだろう。だから、この冬が来るまえに、もう一度あの頃の自分に逢いたい、と思う。でも、僕は何を語るのだろう。今のままでいいよと語れるのかな。友達もなく、恋人もない孤独な自分に、向き合えるのかな。(ゲンゴロウ)
 
capo
大学時代のギターの教本と当時のカポ:ソノシートとチャゲの字が泣かせます。カポは最初ゴムでしたが、使い方が荒くてすぐダメになってしまうので、金属に。ピックもすぐ割ってしまうのでアルペジオとスリーフィンガーになりました。当時は若かったので、標準より一段高音にキーを変調して力任せに弾いていました。下宿の人はあきれて「シャウティングオフコース」「ギターボーイ」と呼んでました。
スポンサーサイト



[ 2013/10/20 21:18 ] 銀塩日記 | TB(0) | CM(0)
プロフィール

倉田和人

  • Author:倉田和人
  • FC2ブログへようこそ!
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
09 | 2013/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索