絵日記 日日平安 2008年02月18日
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『私の男』の本当の顔 -好日読書 vol.22-

 桜庭一樹『私の男』を読みました。
 直木賞受賞作。文化放送「ゴールデンラジオ」で大森望さんが、TBS「ストリーム」で豊崎由美さんが、それぞれ絶賛されていました。
 読んだらやはりおもしろい。ただ、当ブログの管理人さんには不評で「キモい小説」と書かれています。アマゾンでもそういう感想が結構多い。確かに気持ちの悪い話です。
 「自分はなぜおもしろいと思ったのか」ちょっとまじめに振り返ってみました。そうしたら、この小説の「本当の顔」が見えてきました・・

 実は、私は主人公の男女に結構共感できたのです。「カッコいい」とさえ思った箇所もあります。だからおもしろく読めたのでしょう。
 どこに共感したか。近親相姦のところでは(無論)なく、主人公たちの「世の中に何も期待しない感じ」「虚無感」「無常観」のようなものにです。
 その底には「社会でうまく生きられないという感覚」「孤独感」「世の中に対する呪詛」(大げさですが)のようなものがあります。
 「人とつきあうよりも本が好き」「本だけが友達」というタイプの人間は、しばしばこういう感覚を持つものです。
 作者の桜庭さんも「WEB本の雑誌」のインタビューで「本ばかり読んでいて、全然喋らない子供だった」「外が嫌で。とにかく家で読書しているのが好きでした。本ばっかりです」とおっしゃっていますから、おそらくそういう方なのでしょう。

 「社会でうまく生きられない」という主題は、実は日本の小説が延々と取りあげてきたものです。(若干の揶揄も込めて)「日本文学の王道」と言ってもいいでしょう。
 この作品も「近親相姦」とか「殺人」とか、目を引く意匠を取り去ると、漱石の『門』などとよく似た筋(背徳的な男女がひっそりと暮らしていく)であることに気づきます。
 そう、この作品の本当の顔は「ノワール」ではなく「文学の王道」だったのですね。
 直木賞の選考委員や書評家のみなさんも、そのあたりに反応されたのではないでしょうか。

 私は、この小説は続編が書かれるような気がします。主人公の女の子は最後に結婚するのですが(最後といっても小説の冒頭です。章を追うごとに時間をさかのぼっていくという書き方がされています)結婚相手が自分とは正反対の、世渡りのうまいタイプの男性で、うまくいくとはとても思えない。今にも悲劇が起こりそうで、作者が舌なめずりしているのが目に浮かぶようです。
 管理人さんは読まないでしょうが、私は読むと思います。(読書一郎)
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[ 2008/02/18 00:56 ] 好日読書 | TB(0) | CM(1)
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