絵日記 日日平安 2007年06月
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『滝山コミューン一九七四』を読む -好日読書 vol.14-

 原武史『滝山コミューン一九七四』(講談社)を読みました。『大正天皇』『鉄道ひとつばなし』で知られる歴史学者が書いた、一種の自伝です。
 自伝といっても普通の自伝ではありません。描かれるのは著者の小学校時代。1973年から74年頃。この時に体験した「滝山コミューン」が本書の主役です。

 こんな話です・・
 舞台は東京郊外の小学校。戦後生まれの若い意欲的な教師が着任します。彼はこの学校を改革し、子供たち自身が「民主的自治集団」を作るような、新しい教育を試みる。旧ソ連の教育学者マカレンコの唱える「集団主義教育」が、そのバックボーンです。
 結果、子供たちは「児童代表委員会」を自ら組織したり、林間学校の企画や運営を自分たちでするようになる。これを著者は「滝山コミューン」と名づけました。

 こう書くとよさそうな話なのですが、できの悪い子供たちを監視する係がいたり、子供が昼休みに「私が委員長になったら代表委員会をみんなのものにします!」と教室を演説してまわったり、意にしたがわない子供(=著者)を別室に呼び出して「自己批判」を強要したり、と、どうも実体はあまりよくないのです。
 旧ソ連がそうであったように、全共闘運動がそうであったように、理想的な社会を作ろうとしていたのに、いつのまにか全体主義的な社会ができあがっていた、という感じです。
(今の視点で見ると「旧ソ連」と「自治・自由」というのも、あまりマッチしない組みあわせのような気がします)

 著者は自分の記憶だけではなく、小学校時代の文集や卒業アルバム、当時の新聞記事、関係者へのインタビュー、当時の「日教組」「全生研」(=全国生活指導研究協議会)の資料などを丹念に取材し、滝山コミューンの全貌をリアルにかつ立体的に浮かび上がらせています。

 子供たちが「洗脳」されていく様子が、眉村卓の「ねらわれた学園」を思わせ、ユートピアがユートピアでなくなっていく感じは、ジョージ・オーウェルの「動物農場」を思わせます。

 まあ、そこまで言うのはおおげさかもしれません。著者は暗黒の世界のように書いていますが、実際には満足していた子供もたくさんいたのではないでしょうか。
 とにかくものすごくおもしろく、(学者タイプの人間の孤独、というようなことも含めて)考えさせられる本です。(読書一郎)
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[ 2007/06/28 23:17 ] 好日読書 | TB(0) | CM(3)
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