絵日記 日日平安 好日読書
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8月に読んだ本 -好日読書 vol151-

 8月に読んだ本の感想を書きました。
 今回、ためしに「読書メーター」というサイトに登録して書いてみました。

 https://bookmeter.com/users/1028166/reviews

 「読書メーター」はPCでも使えますが、スマホアプリもあります。
 今回はすべてスマホで書いています。電車の中などで本を読み終わったら即感想を投稿しました。

 去年まで「今年のベスト10」という題で年に1回だけ更新していたのですが、いざ書くときには本の内容を忘れていたりして、あまりよろしくありませんでした。
 このやりかたならさすがに覚えています。

 その他の長所は
 ・書影や書誌情報が自動で入る。
 ・FBでブロックされる心配がない(笑)。

 短所もあって、
 ・スマホで書くので長い文章は書けない。
 ・当ブログは「その本を読んでいない人向け」に書いていたが、読書メーターは基本「読んだ人」向け。必然的に書き方が変わる。
 ・読んだ本が全部載る(セレクトされない)。「はずれ」の本も入ってしまう。
 ・順番は完全に読んだ順になる。編集不可。
 ・原則本の感想のみ。映画等はなし。

 しばらく使ってみようと思います。

 今月のベスト3は『夏物語』『安楽死を遂げた日本人』『AIに負けない子どもを育てる』ですね。
 引き続きよろしくお願いします。(読書一郎)
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[ 2019/09/11 11:48 ] 好日読書 | TB(0) | CM(0)

5月から7月までに読んだ本 -好日読書 vol150-

 読書一郎です。本連載もようやく150回を迎えました。初掲載から13年。読んでくだすっている方、ありがとうございます。
 内容はかわりばえせず、最近読んだ本について書きました。ほぼ読んだ順です。


①井上荒野『あちらにいる鬼』朝日新聞出版(初版2019年2月)

 小説家の白木篤郎と長内みはるは不倫関係にある。白木の妻・笙子はそれを黙認。やがてみはるは出家、三人は独特の絆で結ばれ続ける・・
 白木のモデルは著者の父・井上光晴(「全身小説家」という映画になった方ですね)。みはるのモデルは瀬戸内寂聴。
 実の娘が父の不倫を描き、相手の寂聴さんが帯に推薦文を書いている、という何かすごいことになっているのですが、作品にスキャンダラス感はゼロ。女性たちの聡明さと美しさが描かれた品格ある小説です。


②柚月裕子『慈雨』集英社文庫(初版2019年4月 元本2016年) 『盤上の向日葵』中央公論社(初版2017年8月)

 『慈雨』は「本の雑誌が選ぶ2016年度のベスト1」。定年退職した刑事の人生をしみじみ感じる1冊。
 『盤上の向日葵』は将棋を題材にした警察小説。プロ棋士ではなく真剣師(賭け将棋で稼ぐアマチュア強豪)の話で、団鬼六の名作『真剣師・小池重明』を否応なく思い出します。
 2冊読んだ限りでは、この著者はホントに「おじさん大好き」。おじさんを描く筆が生き生きしていてすばらしいです。逆に、今どきの若者には興味がなさそうですね・・


③大澤真幸『社会学史』講談社現代新書(初版2019年3月)
 田中正人編著・香月孝史著『社会学用語図鑑』(初版2019年3月)

 『社会学史』は現代新書2500番。600ページ以上ある分厚い本です。「大澤さん独自の視点で語られた社会学史」と思いきやそうではなく、割と教科書的な内容でした。
 同じ時期に出た『社会学用語図鑑』もいい本でした。網羅的で、イラストもかわいく、両方読むと理解が深まると思います。


④山崎ナオコーラ『美しい距離』(初版2016年7月) 宮下奈都『静かな雨』文春文庫(初版2019年6月 元版2004年)

 『美しい距離』は、本ブログ管理人さんに教えてもらい読みました。サンドイッチ屋を営んでいた妻がガンに冒される。それを見舞う夫や常連たち。穏やかに死を受け入れていく夫婦の姿が美しい余韻を残します
 『静かな雨』は、たいやき屋を営む恋人が事故にあってしまう、という話。宮下さんのデビュー作だそうです。こなれていないところはあるものの、これも静かで美しい小説です。
 『風立ちぬ』以来、こういう話は書き継がれているんだなあと思いました。


⑤赤坂真理『箱の中の天皇』河出書房新社(初版2019年2月)
 赤坂憲雄『象徴天皇という物語』岩波現代文庫(初版2019年4月)
 伊藤智永『「平成の天皇」論』講談社現代新書(初版2019年4月)

 平成が終わり、令和がはじまりました。関連する本を何冊か読みました。
 
 『箱の中の天皇』は『東京プリズン』の著者が「象徴天皇とは何か」を書いた小説です。
 現実と幻想が交錯するなか、著者はマッカーサーと一緒に明仁天皇のビデオメッセージを見ます。ちょっとだけ引用します。

  ”シンボルとは、旗のようなもの”
  旗のようなもの、という言葉が、憲法第一章第一条に書かれているのだ。(中略)
  ”天皇は、日本国の旗のようなものであり、日本国と日本国民の、旗印である”(中略)
  そして天皇が、その責務を、全身全霊でしてきたというのだ。(中略)
 
 「陛下、これをお受け取りください」
  天皇に、二つの箱を差し出した。天皇と目をみかわした。深くあたたかな瞳だった。(中略)
  天皇はひとつを、わたしに返した。両手で、わたしの両手を包むように。
  わたしの手に、その手のぬくもりと大きさとやわらかさがずっと残っていた。
  父のような。母のような。涙のような。海のような。


 明仁天皇の「孤独すぎる旅」に思いをはせて、ちょっとウルッときてしまいました。
 
 『象徴天皇という物語』『箱の中~』の「学術版」ともいうべき内容。この著者の苗字も赤坂さんですが、真理さんと親戚ではないと思います。(たぶん)
 平成が始まったときに書かれた本ですが、ビデオメッセージを見て書かれた「補章」が加わって先ごろ再刊されました。
 その補章から引用します。

  天皇という制度はたしかに、西欧の世俗的な王権とは大きく隔たったものだと、あらためて思う。(中略)
  ひとりの生身の人間にたいして、現人神を演じたり、その生涯を国民のために祈りを捧げ尽くすことを強いるような制度であることの、大いなる残酷を思わずにはいられない。(中略)
  わたしの貧しい想像力がその深みに届きえないことに、もどかしさと無念を覚えている。


 『「平成の天皇」論』は、毎日新聞の記者が書いた「ジャーナリズム版」
 「リベラルな天皇家 vs 日本会議・靖国神社」という構図がわかります。平成の天皇家が「象徴とは何か」を熟慮のうえ、明確な意図をもって活動されてきたことが理解できる本です。


⑥三浦瑠璃『21世紀の戦争と平和』新潮社(初版2019年1月)

 テレビでよく拝見する三浦さんの本。「徴兵制を復活させろ」という、一見ビックリするようなことを言っています。
 背後にあるのは「衆愚論」「ポピュリズムに対する警戒心」ですね。
 戦場に行く兵士が自分たちとまったく関係のない人たちだと、国民は戦争を支持しやすくなる。徴兵制になり「自分たちが動員される」となればもっと慎重になるのではないか。
 確かにそうかもしれません。「民主主義=無条件に善」という図式は疑ってかからくてはいけない。ただ、その解が「徴兵制」と言われると、うーん・・とはなってしまいますね。何か答えはあるはずです。

⑦金原ひとみ『アタラクシア』集英社(初版2019年5月)
 山田昌弘『結婚不要社会』朝日新書(初版2019年5月)
 綿矢りさ『生のみ生のままで』集英社(初版2019年7月)

 綿矢さんと金原さんは、かつて芥川賞を同時受賞されました。あれから15年。お二人の新作があいついで刊行されました。どちらも傑作です。

 『アタラクシア』は三組の夫婦を描いた長編。三組とも、不倫していたりDVがあったり、まったく幸せではない。すれ違い、傷つけあう夫婦のさまがリアルです。
 全編に漂うヒリヒリするような緊張感はただごとではなく、最後まで出口も見当たらず、激辛カレーを水なしで食べたような読後感です。
 『結婚不要社会』は『アタラクシア』の理論編ともいうべき内容。「これからはもう結婚しなくていいんじゃないの?」という気持ちになります。

 『生のみ生のままで』は女性同士の恋愛を描いた上下巻の大作。『手のひらの京』が「綿矢版・細雪」なら本作は「綿矢版・卍」でしょう。
 性描写も多いのに、その実驚くほどストレートな「純愛小説」です。一気に読まされ、最後は主役二人の幸せを願わずにはいられなくなりました。名作です。


⑧今村夏子『むらさきのスカートの女』朝日新聞出版(初版2019年6月)

 前回も取り上げた今村さんの新作。
 いや、これもすごい。すごいとしか言えないですね。
 全編コメディタッチ。笑って読んでいるうちに風景が少しずつ歪んできて、気づいた時には狂った世界に入り込んでいる。そして、最後まで読むと「もしかして狂っているのは自分たちの方かも・・」という気にさせられる。他ではまず味わえない読書体験です。

 サラッと書かれているのもすごい。小説の技法で「信頼できない語り手」というのがあって、今村さんはこれの名手です。本作ではミステリばりの「叙述トリック」まで使われています。ただ、そういう技巧を一切感じさせず、自然に書き流していそうに見えるところがすごい。
 この先、新しい世界観を書いてくれるのか、書ける人なのか。期待と心配が両方あります。

 本作は芥川賞にノミネートされました。他のノミネート作は読んでいないのですが、これが負けるとはちょっと想像しづらい。たぶん受賞すると思います。


⑩内澤旬子『ストーカーとの七〇〇日戦争』文藝春秋(初版2019年5月)

 『世界屠畜紀行』など、一風かわったノンフィクションを書かれている内澤さん。小豆島に引越して、そこで交際した男性からストーカー被害を受けていた・・その一部始終を書いた本です。
 「こんなことまで書いて大丈夫なの?」と心配になってしまう赤裸々すぎる内容。ストーカーの恐怖、むずかしい立場の警察、「当たりはずれ」のある弁護士・・ちょっと類書がないと思います。


⑪江國香織『彼女たちの場合は』集英社(初版2019年5月)

 14歳の礼那と17歳の逸佳は、親に黙ってアメリカ横断旅行に出かける。行く先々でさまざまな出会いがあり・・
 名人・江國さんの文章芸をただ堪能する、という小説です。登場人物たちは生き生きと動き、アメリカの風景もくっきりと見えてくる。いつまでも小説世界に浸っていたい、という気にさせられます。
 サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」という曲を思い出しました。


 長くなりました・・最後まで読んでくだすってありがとうございます。また151回目でお会いしましょう。(読書一郎)
[ 2019/07/16 10:56 ] 好日読書 | TB(0) | CM(0)

2月から4月までに読んだ本 -好日読書 vol149-

 読書一郎です。
 前回アップさせていただいたのが2月。その後読んだ中から、印象に残った本について書かせてもらいます。ほぼ読んだ順です。

①ハンス・ロスリングほか『ファクトフルネス』日経BP社(初版2019年1月)
 ビル・ゲイツが「大卒の希望者全員にプレゼントした」という本。全国民必読の名著だと思います。

 最初に13問のクイズが出されます。2問だけ引用します。
 「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう? A.20% B.40% C.60%」
 「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている人子供はどのくらいいるでしょう? A.20% B.50% C.80%」

 正解はどちらもC。今、世界の貧困問題はかなり改善されているのです。
 今、世界はどうなっているか、この30年でどう変わったか。数値(ファクト)と著者自身の豊富な支援体験から、世界の「今」について、私たちの思い込みを正してくれます。


②アレクサンダー・トドロフ『第一印象の科学』みすず書房(初版2019年1月)
 心理学の先生が「第一印象はあてにならない」と主張する本。
 なるほど、という話が多くておもしろいのですが「そうは言っても顔を見りゃわかる」と思ってしまうのが根深いところです。


③真藤順丈『宝島』講談社(初版2018年6月)
 直木賞受賞。管理人さんも推奨の名作です。
 3人の主要人物を軸に、サンフランシスコ講和条約から本土返還までの20年間を描きます。
 重い話を沖縄言葉を使って軽やかに語ります。読みごたえがあります。

④今村夏子
『父と私の桜尾通り商店街』KADOKAWA(初版2019年2月)
『あひる』角川文庫(初版2019年1月 元版2016年)
『こちらあみ子』ちくま文庫(初版2014年7月 元版2011年)
『星の子』朝日新聞出版(初版2017年6月)
 小説です。今村夏子さん、今回初めて読みました。
 本になった作品はここに挙げたものがすべて。これは読んだ順です。
 最初に読んだのが、短編集『父と私の~』の冒頭「白いセーター」。これが天才的な作品。個人的には『コンビニ人間』以来の衝撃でした。

 『あひる』は「あひるを飼い始めたら子どもが家に集まるようになった」という話。そう聞くとほのぼのとした感じですが、まったく違い、読後には不穏な印象だけが残る、という、なんというか「天才にしか書けない小説」です。
 今村さん、先日文芸誌に新作を発表してくれていて、単行本化を楽しみに待ちたいと思います。


⑤佐々木典士『ぼくたちにもうモノは必要ない』ちくま文庫(初版2019年2月 元版2015年)
 「ミニマリスト」という「モノをほとんど持たない」主義の方たちがいます。
 サラリーマンだった著者がミニマリストとなり、どんどんモノを処分、部屋はスッキリ、仕事もやめ、田舎に移住・・その思索と行動を記録した本です。
 私もこの本に影響されて、洋服と本を大量に処分しました。「モノを処分する」のは独特の快感を生みますね。


⑥木庭顕『誰のために法は生まれた』朝日出版社(初版2018年7月)
 今年の「紀伊國屋じんぶん大賞」第1位受賞作。(「人文書」の「本屋大賞」のようなものですね)
 クセのありそうな著者ですが、内容はおもしろいです。
 テーマはズバリ「法とは何か」。いわゆる「世間」「地元の大物」「黒幕」から「一個人」を守るのが法である、というのが答えです。凛とした思想が伝わってきて、勇気づけられる本です。


⑦辻村深月『傲慢と善良』朝日新聞出版(初版2019年3月)
昨年の本屋大賞受賞者・辻村さんの新作
 『高慢と偏見』という有名な小説がありますが、それの現代日本版&辻村版です。
 仕掛けは比較的早くわかるのですが、そこからが意外な方向に展開します。「いい話」に着地させる剛腕ぶりがすごい。辻村さんの実力がよくわかります。


⑧澤宮優『三塁ベースコーチが野球を変える』河出文庫(初版2018年12月 元版2013年)
 プロ野球の「三塁ベースコーチ」のことを書いたドキュメント。
 初めて知ったのですが、三塁ベースコーチは「攻撃時の監督代行」と言われるほど大事なポジションなのだそうです。
 インタビューを中心に、その緻密な仕事ぶりが描かれます。球場に行っても、三塁コーチの様子をチラチラ見るようになりました。


⑨今村昌弘『魔眼の匣の殺人』東京創元社(初版2019年2月)
⑩澤村伊智『予言の島』KADOKAWA(初版2019年3月)
 「予言」をテーマにしたミステリが二作。どちらも傑作です。
 『魔眼~』は『屍人荘の殺人』で話題をさらった今村さんの第二作。
 とてもいいです。カチッとした本格で、キャラクターもこなれてきました。私は第一作よりこちらの方が好きですね。

 『予言の島』の澤村さん、初めて読んだのですが こちらもすごくいいです。
 いかにもなオカルト風に始まりながら、途中で本格ミステリに転換、しかし最後はやっぱりホラーになります。
 あっと驚くトリックも登場します。(別ジャンルの作家が書かれた某名作とちょっと似ていますね)


⑪木皿泉『カゲロボ』新潮社(初版2019年3月)
 今年の本屋大賞にもノミネートされた木皿さんの新刊。
 ちょっと微妙でした。もちろんうまいのですが「近未来SF」なのか「人間ドラマ」なのか、やや中途半端な印象でした。カバーイラストがかわいいです。


⑫横山秀夫『ノースライト』新潮社(初版2019年2月)
⑬桐野夏生『とめどなく囁く』幻冬舎(初版2019年3月)
 大御所お二人の新作。
 横山さんは『64』以来6年ぶりの新作。まったくの新作ではなく、以前雑誌に連載したものを大幅に改稿したらしい。
 面白い。ただ「横山さん久々のの新作」というだけで期待値は相当上がっていて「『64』と比べると・・」という感想になってしまうのはいたしかたないところです。

 『とめどなく~』は桐野さんの新聞小説。
 ちょっと失敗作かな・・という印象です。魅力的な謎が意外に広がらず、主人公と周囲の常にかみ合わない会話が延々と続く、という感じ。ただ、その分リアリティはすごいです。


⑭吉田修一『横道世之介』毎日新聞社(初版2009年9月)
    『続横道世之介』中央公論新社(初版2019年2月)
 これも管理人さん推奨。名作青春小説の続編が10年ぶりに登場。と言っても正編も読んでおらず、これを機にまとめて読みました。
 今さら大学生の日常を読んでもなあ・・と冷めた気持ちで読み始めたのですが、世之介君の善良さにじわじわとやられてしまい、最後は感動しました。
 実は私は世之介君と同い年。(作者の吉田修一さんとも同い年です)田舎の大学でしたが、あの時代の空気感はわかります。


⑮瀬尾まいこ『傑作はまだ』ソニー・ミュージックエンタテインメント(初版2019年2月)
 今年の本屋大賞受賞者・瀬尾さんの新作。
 短い話ですが、やっぱりいいですねえ。登場人物が「悲しみや不条理さに本気で触れたいなら、小説なんて読まずに総合病院の小児病棟へ行けばいい」と語るシーンがあって、瀬尾さんの小説に対する姿勢を見る気がしました。


⑯朝倉かすみ『平場の月』光文社
 50歳の青砥は、検診に行った病院で中学時代の同級生・須藤葉子と再会する。二人は急速に親しくなるが・・
 今年のベスト1です
 私は主人公と同じ50歳。同じ東武東上線沿線に住み、同じような職場環境で長く勤務したこともあり、何か狙い撃ちにされた感じです。
 恋愛小説なのですが、朝倉さんは女性作家だけあって、男性のいやらしい目線は皆無。ヒロインが全然かわいくなくて、そこが本当に素敵で魅力的です。
 ただもう、終わり方が痛切すぎて・・読み終わって、やり場のない気持ちで数日間過ごしました。
 中年の恋愛といえば『マチネの終わりに』ですが、私は本作の方が100倍くらい好きです。


⑰カール・ホフマン『人喰い』亜紀書房(初版2019年4月)
 この本は現在読書中です。(200Pくらい進行中)
 ロックフェラー財閥の御曹司・マイケルがニューギニアで行方不明になる・・その真相を追ったドキュメントです。
 タイトルが「人喰い」、舞台は首狩り族のいるニューギニア、帯にもそれらしいことは書いてあり、何が起こったかは想像がつきますが、冒頭16ページでいきなり出てきます。著者の関心は「何が起こったか」より「なぜ、どういう状況で起こったか」にあるようです。
 『平場の月』の後に読むとあまりの落差にクラクラしますね・・(読書一郎)
[ 2019/04/19 16:53 ] 好日読書 | TB(0) | CM(0)

本屋大賞を予想する -好日読書 vol148-

 先日「本を読む習慣のない学生にすすめる本」という原稿を書いたときに(http://ci5.blog20.fc2.com/blog-entry-2021.html『そして、バトンは渡された』という本のことをチラッと書きました。
 「今年の本屋大賞はたぶんこれで決まりです」などと書いてしまったのですが、実は、その時点では他のノミネート作はほぼ読んでいませんでした。

 読まずにこんなことを言うのもなんなので、一念発起して、他の候補作も読みました。
 小説をこれだけまとめて読んだのは20年ぶりくらい?でしょうか。

 以下、本屋大賞ノミネート作の感想と、大賞の予想を競馬風に書いてみます。
 順番は読んだ順です。


『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
 ブランチブックアワード受賞。キノベス(紀伊國屋書店の書店員さんがセレクト)1位。他の候補作を読みましたが、やはりこれが本命◎です。
 重く書けそうな題材を明るく描ききり、それでいて小説的なおもしろさはしっかりキープしてくれています。
 ちなみに私はこの小説を読んでいて通勤電車を1駅乗りすごしました。
 同じ著者の『強運の持ち主』『幸福な食卓』も読みましたが、本作がベストです。


『ベルリンは晴れているか』深緑野分
 第二次大戦直後のドイツを舞台にしたミステリ。
 日本人は一人も出てきません。荒廃したドイツの様子もリアルです。
 こういう小説を書く作家が現れたか、という感慨があります。
 ただ、そういうことを抜きに読むと、ストーリーや人物造形に不満が残るのも事実。次作以降にまだまだ期待の作家です。


『愛なき世界』三浦しをん
 東大の植物研究室の「ちょっとだけかわった日常」を描いた小説。
 ささやかな事件や成就しない片思いが丁寧に描かれていきます。登場人物もみな魅力的。三浦さんの小説家としての力量がよくわかる作品です。
 惜しむらくは、2012年の大賞受賞作『舟を編む』と似た印象なこと。「今回は初ノミネートの瀬尾さんに投票しよう」となりそうな気がします。なので、予想は連下△。


『熱帯』森見登美彦
 作者自身が「我ながら呆れるような怪作」と語っている通り、あきれるほどの怪作(笑)です。
 次々に繰り出される「幻想的なエピソード」とリアルに描かれた「東京・京都の地誌」のバランスが絶妙で、読み終わってしばらくは、現実世界にいても本の中に捕らえられてしまったような、熱に浮かされたような気分で過ごしました。
 こういうスクリューボール的な作品が大賞となる確率は低いと思うのですが、スタンダードな「いい話」は票が割れる可能性もあり、森見さんに取らせたいという書店員さんも多そうで、単穴▲。


『さざなみのよる』木皿泉
 ヒューマンドラマ。若くしてなくなった女性の人生が、短いエピソードを重ねることで、じわりと浮かび上がってきます。
 とにかくうまい。ただ、他の候補作と比べるとちょっと軽いかなあという印象です。これなら『そして、バトン』に投ずるのではないか。とは言っても読みやすさとうまさを買って対抗〇。

 2014年に2位だった『昨夜のカレー、明日のパン』も読みました。こちらも超傑作です。とぼけているのにせつない。これで大賞が取れなかったんですね・・この年の大賞は『村上海賊の娘』。相手がよくなかった。めぐりあわせも大きいですね。


『ある男』平野啓一郎
 結婚して子供まで授かった相手が別人だった・・候補作中、いちばんひきこまれる冒頭でした。「この先どうなるんだ!?」と期待しながら読みました。
 ただ、ストーリーは意外に(たぶんわざと)展開しません。三島由紀夫を思わせる思弁的な文体で、読者にじっくり考えさせる作品となっています。個人的には不満もありますが、読みごたえはありました。
 ただ、本屋大賞向きではない気がします。初ノミネートであることとキノベスでも2位になったことを加味して大穴☆。

 話題になった『マチネの終わりに』も読みました。しゃらくさい小説ですが、ラストがとにかく美しいですねえ。中年男女の恋愛は、渡辺淳一をもちだすまでもなく不潔な雰囲気をまとうものですが、不潔でも通俗でもなく仕上がっているのがさすがです。文章の力ですね。映画化されるようですが、文章がなくなるとかなり通俗的になりそうで心配です。そういえば「スマホを落としただけなのに」という映画がありましたけど、この小説もまさにそういう話ですね・・


『ひと』小野寺史宜
 人情小説。他の候補作と比べて「小説技術」の点で見劣りするのは事実ですが(他の候補作がみんなすごいので・・)いい話なのはまちがいなく、読み終わってとても温かな気持ちになりました。
 こういう作品が選ばれることに、日々の書店員さんたちのまじめな仕事ぶり、暮らしぶりが見えてくるかのような気がします。


『火のないところに煙は』芦沢央
 怪談。『さざなみの夜』『ひと』の後で読むと「清涼剤の並んだ中にある一服の毒薬」という感じで ものすごく新鮮に読めました。
 私はホラー小説が苦手で、読んでいて鼻白んでしまうことが多いのですが、これは恐かったです。読後感がきわめて悪いのもすばらしく、本屋大賞の懐の深さを感じます。
 大賞はないと思いますが、こういう小説を評価する「裏大賞」を作るといいんじゃないか、と思いました。
 同じ著者の『悪いものが、来ませんように』も読みました。おもしろかったでずか、本作の方がいいと思います。


『フーガはユーガ』伊坂幸太郎
 常連・伊坂幸太郎さんの新作。
 伊坂さん、久々に読んだのですが、やはり「モノが違う」作家さんだなあ、と思います。
 陰惨な話なのに、文体とリズムで軽快に読ませてしまう。軽く書いているようで、構成がカチッとしている。登場人物もみな「ちょいワル」感があり魅力的です。
 未読だった2008年の大賞受賞作『ゴールデンスランバー』もついに読みました。傑作ですが、今読むと少し「古い」かも。今ならSNSに動画がアップできます。現代日本で「権力が情報を統制する」のは難しいんだと思います。(=「世の中がよい方向に向かっている」ということです。中国ではまだ・・ですからね)


『ひとつむぎの手』知念実希人
 医療小説。作者は現役のお医者様で、医局の狭い狭い人間関係や医師の過酷な日常がリアルに描かれています。
 正月に『死すべき定め』という本を読みました。すばらしい本でしたが、本作にも『死すべき定め』を彷彿させるエピソードが登場します。あらためて医師という職業に対する敬意が増しました。
 個々のエピソードがからみあわず連作短編のようである、登場人物の魅力が今一つである、カタルシスを100%与えない大人なラスト、と、小説の完成度はやや劣るかもしれません。ただ、それらを補って余りある魅力を備えた作品です。


 いやあ、小説って本当にいいものですね。(水野晴郎 今何してるんだろう、と思ったらだいぶ前に亡くなられて・・遅ればせながらご冥福をお祈りします)
 今年はもっともっと小説を読もうと思います。それではまたお会いしましょう。(読書一郎)
[ 2019/02/20 16:20 ] 好日読書 | TB(0) | CM(7)

本を読む習慣のない学生にすすめる本(後編) -好日読書 vol147-

 読書一郎です。「本を読む習慣のない学生にすすめる本」の続きです。

<3.「今の生活」を俯瞰的に見るための本>
 菅野仁『友だち幻想』ちくまプリマー新書 『愛について』ちくま文庫
 東浩紀ほか『東京から考える』NHKブックス 『ショッピングモールから考える』幻冬舎新書
 岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー
 半藤一利『昭和史』平凡社ライブラリー
 大澤真幸 橋爪大三郎『ふしぎなキリスト教』講談社現代新書

 デカルト『方法序説』岩波文庫
 J・S・ミル『自由論』光文社古典新訳文庫

 マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫ほか
 ペネディクト・アンダーソン『想像の共同体』書籍工房早山


  「友だち」「東京」「サラリーマン」「会社」「ビジネス」・・これらの「現在のありよう」は「今の日本に特有のもの」と言っていいと思います。自然にそこにあったわけではなく、いつまでも続くわけではない。時代とともに変わるし、変えなくてはいけないものもある。
 読書は「今現在の人生や生活」に対して、そういった「俯瞰的な視点」をもたらしてくれます。

 『友だち幻想』『愛の本』は人づきあいに悩む方、内向的な方におすすめ。「友だちがいない奴はダメな奴」というのは本当にごく最近に生まれた考え方ですね。

 『東京から~』『ショッピングモール~』『会社は~』は2000年代初頭の社会を分析した本。賞味期限が微妙ですが、まだおもしろく読めると思います。

 今を知るには歴史を知らなくてはいけません。『昭和史』で描かれた世界は、ほんの70年前のこと。別世界のようですが、昔の人たちの莫大な努力と犠牲があって今があります。

 また、今の日本(と世界)は「近代西洋」の影響を抜きには語れません。
 「西洋」を考えるのにキリスト教の知識は不可欠です。『ふしぎなキリスト教』は手軽に読めて、現代への影響とかにも言及してくれる本です。

 デカルト、ミルはちょっと敷居が上がりますが、意外に読みやすく、長くなく、読むための専門知識も不要です。「近代西洋」を形づくった「考え方」がよくわかります。

 最後の2冊はさらに難度高め。参考程度に挙げてみました。
 『プロ倫』は厚いですが、注釈もかなり多く、注釈を飛ばすと意外にスッと読めます。キリスト教のことも資本主義のこともわかり、ミステリ感覚でも楽しめます。
 『想像の~』も現代の古典。私が持っているのはNTT出版発売の旧版ですが、今は別の版元から増補改訂版が出ていますね。圧倒的におもしろいですが、若干前提知識が必要かもしれません。


<4.文章論・ものの考え方を学ぶための本>
 木下是一『理科系の作文技術』中公新書
 加藤典洋『言語表現法講義』岩波書店
 佐藤信夫『レトリック感覚』講談社学術文庫
 マイケル・サンデル『これからの正義の話をしよう』ハヤカワ文庫

 「文章論」の本も挙げてみました。
 『理科系の作文技術』は文章作成のテクニックを教えてくれる技術書。就職してからも役に立つと思います。
 『言語表現法講義』は「文科系の作文技術」の本。単なる技術ではなく、もっと深い内容です。少し古いですがぜひ。
 『レトリック感覚』は小説の文章技法を分析した本。これも古いですが、去年くらいに再読したらおもしろかったです。
 『これから~』はテレビでも話題になりました。「ものの考えかた」「対話のしかた」を教えてくれる本。英米の政治哲学の考え方がひととおりわかります。


<5.私が人生で影響を受けた本>
 長谷川町子『よりぬきサザエさん』『いじわるばあさん』
 泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』『乱れからくり』「亜愛一郎」シリーズ
 ロラン・バルト『テクストの快楽』『神話作用』
 小川洋子『シュガータイム』『妊娠カレンダー』
 九鬼周造『「いき」の構造』
 中島敦「中島敦全集」
 夏目漱石『それから』『門』『こころ』
 つげ義春『無能の人』
 ジョージ・オーウェル『オーウェル評論集』『動物農場』
 親鸞『歎異抄』


 最後に私的な本を。
 「人生で影響を受ける」とは「作者や登場人物の生き方、考え方をマネしようとする」くらいの意味です。
 年齢が上がるにつれてそんなことはなくなるので、ここに挙げた本も20代までに読んだものばかりです。本に限らず、若い時の出会いは大切ですね。
 出版社名を(私が読んだ時とはかわったものも多いので)書きませんでしたが、今でもだいたい読めるようです。
 こうして並べると、今(50歳)のフニャフニャした私の性格がよくわかる気がしますね・・よきにつけ悪しきにつけ、読書は人格に影響を与えます。人生と同じように。(読書一郎)
[ 2019/01/25 10:03 ] 好日読書 | TB(0) | CM(0)
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